2027年シーズンから、プロ野球セ・リーグで指名打者制(DH制)が正式に採用される。2026年は「DH制採用のための猶予期間」と位置づけられ、各球団は編成や育成、戦術を大きく見直す一年になりそうだ。
約半世紀にわたり「投手も打席に立つ9人野球」を続けてきたセ・リーグが、ついに大転換を決断した。そもそもDHとは何なのか。歴史とメリット/デメリットを整理しながら、セ・リーグ導入で何が変わるのかを考えてみたい。
DH制とは何か ― 投手の打順を専用打者に置き換えるルール
DH(Designated Hitter=指名打者)制とは、投手の打順に「打撃だけを担当する打者」を配置する制度だ。投手は守備(投球)に専念し、代わりに守備につかない打撃専任の選手が打席に立つ。
DH制のポイント
- 投手が打撃や走塁から解放され、投球に専念できる
- 打線に強打者を1人追加できる
- 守備に不安のある選手や故障明け選手も“打撃専任”で起用可能
引き締まった投手戦から、攻撃力重視の試合展開へシフトする可能性がある。
参考:NPB公式発表
DH制の歴史 ― 起死回生の興行改革として誕生
MLBでの始まり
DH制は1973年、メジャーリーグのアメリカンリーグで導入された。投高打低が続き、ロースコアゲームや試合時間の長時間化などから観客離れが問題になっていたなかで、「打撃戦を増やして興行を活性化させる」ことが主な目的だったとされる。
その後、ナショナルリーグも2022年にDH制を採用し、MLBは「ユニバーサルDH」へ一本化された。
日本での導入
日本ではパ・リーグが1975年にDH制採用。観客動員のテコ入れとして、攻撃的な野球を前面に出す戦略だった。
一方セ・リーグは「投手も打席に立つ9人野球」を守り続けたが、2025年に方針が転換。2027年よりついに全12球団でのDH制採用となる。
アマチュアでも進むDH化
- 2026年:高校野球でDH制導入
- 東京六大学、関西学生野球なども2026年からDH制を導入
日本野球全体が「投手は投げる・打者は打つ」という役割分担へと流れている。
DH制のメリット ― “10人目の打者”が広げる可能性
1)投手が投球に集中できる
打席や走塁でケガを負うリスクを避けられるため、エース級投手の登板数やキャリア寿命の延長につながると期待される。
2)打線の厚みが増す
投手が打席に立たないため、ラインナップに「切れ目」が減る。ビッグイニングの可能性もアップする。
3)ベテランや打撃特化選手の活躍の場が広がる
守備に難のある選手でも、打撃だけで勝負ができる。
4)戦術の幅が広がる
- DHへ外国人スラッガーを据える
- 主力の“半休ポジション”として回す
- 若手打撃型の育成枠にする
球団ごとの色がより際立つようになる。
DH制のデメリット ― 消えていく「投手の打席」というドラマ
1)控え野手の出場機会が減る
投手の打順を起点にした代打・代走が減少するため、控え野手の出場機会は相対的に減る可能性がある。
2)投手交代の駆け引きが薄れる
「好投しているがチャンスで打順が…」というセ・リーグ特有のドラマが消え、継投判断はよりシンプルに投球内容と球数がベースになる。
3)投手が打席に立つ文化の後退
意外性のあるホームランや、投手の勝負強さといったロマンが見られなくなる。
4)セ・リーグのアイデンティティが変わる
50年続いた“最後の9人野球”は、ここで大きな節目を迎える。
セ・リーグで何が変わる? ― 編成と戦術の再設計
1)編成・ドラフト戦略の変化
- DH専任スラッガーの補強が価値を上げる
- 主力野手の負担軽減策としてDHを使う球団も出てくる
2)先発・救援の運用変化
- 投手交代は打順ではなく「投球内容」で判断される
- 完投能力のある先発の価値が上がる
- 短いイニングを全力で投げる先発の育成も進む
3)育成の一貫性が強化
高校・大学・社会人といったアマチュア野球が2026年以降順次DH制を導入していく流れを考えると、プロとアマのルールが近づき、「育成の一貫性」は増していく。
DH制導入で変わる試合展開 ― 7回裏の一例で見る未来像
例えば、7回裏1アウト1・2塁で「9番打者」の場面。従来なら先発投手の打順で、代打か続投の判断が必要だった。
しかしDH制では、9番にも打撃専任の強打者を置くことができ、投手交代の駆け引きは不要となる。終盤でも打線に“切れ目”がなく、攻守のテンポが大きく変わる。
参考動画(YouTube)
おわりに ― “9人野球”の先に続く物語はこれから
2027年からのセ・リーグは、これまでの伝統から一歩踏み出し、新しい打撃中心の野球へと進んでいく。
選手評価、編成、戦術、そしてファンが面白いと感じるポイント。これらが時間をかけて変化していくはずだ。
新しい“10人目の打者”が、どんな物語を見せてくれるのか。その答えは、これからのセ・リーグが教えてくれる。
