ミラノ・コルティナ2026へ加速する日本勢――小林陵侑・髙木美帆・堀島行真とハーフパイプ新世代の「いま」

WINTER SPORTS

2025年11月22日

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックまで、残り約3ヶ月(2025年11月時点)。雪と氷の世界では、日本のトップアスリートたちがワールドカップや世界選手権で存在感を見せつけています。本稿では「いま追っておきたい」冬季オリンピック日本人選手の最新トピックスを、小林陵侑(スキージャンプ)、髙木美帆(スピードスケート)、堀島行真(モーグル)に加え、スノーボード・ハーフパイプの新世代を中心にまとめます。

小林陵侑――ミックス団体Vで見せた「まだ伸びる王者」

スキージャンプ男子のエース、小林陵侑は、すでに「日本史上屈指のジャンパー」という評価を確立しています。北京2022大会ではノーマルヒル個人で金メダル、ラージヒル個人で銀メダルを獲得し、冬季オリンピックにおける日本ジャンプ陣のエースとして世界に名を刻みました。

それでもなお、2024/25シーズン以降の成績は「全盛期を更新している」と言っていい内容です。2024/25ワールドカップでは勝利を重ね、総合2位に入るなど安定して表彰台を確保。さらに2025年3月のノルディックスキー世界選手権トロンハイム大会では、男子ラージヒル個人で銅メダルを獲得し、世界の頂点争いのど真ん中に戻ってきました。

そして最新トピックスが、2025年11月のリレハンメルで行われたFISスキージャンプ・ワールドカップ開幕戦のミックス団体戦。小林を中心とした日本チームが、この種目では史上2度目となるワールドカップ優勝を飾りました。オリンピック種目でもあるミックス団体で「勝ち切った」ことは、ミラノ・コルティナ2026に向けた最大級の追い風と言えます。

加えて、2024年春にはアイスランドで行われた特別イベントで291mという超ロングジャンプを成功させ、非公式ながら“世界最長クラス”のジャンプとして世界を驚かせました。公式記録にはならないものの、「飛距離」というロマンの側面でも伝説を更新し続けています。

ノーマルヒル金・ラージヒル銀のオリンピック実績に、ワールドカップや世界選手権でのメダル、そしてミックス団体での優勝。あとはミラノ・コルティナでどれだけメダルの色を増やせるか――。29歳となった小林は、経験と技術、そしてメンタルの三拍子がそろった「完成形のジャンパー」として、次の冬季オリンピックを迎えることになりそうです。

髙木美帆――女子1000m「女王」が積み上げる世界タイトル

スピードスケート女子の顔といえば、やはり髙木美帆です。北京2022では女子1000mでオリンピック新記録を樹立して金メダルを獲得したほか、500m、1500m、チームパシュートでもメダルを獲得し、日本女子最多のオリンピックメダル数を更新しました。

その勢いは2024年以降もまったく衰えていません。2024年2月の世界距離別選手権(カルガリー)では、女子1000mと1500mの2種目で金メダルを獲得し「中距離の女王」としての地位を盤石なものにしました。続く2024/25シーズンのワールドカップでは、女子1000m・1500mの両種目でポイントリーダーとなり、シーズンを通して安定した強さを見せつけています。

さらに2025年3月、ノルウェー・ハーマルで開催された世界距離別選手権女子1000mでは、前年に続いて金メダルを獲得し世界タイトル連覇を達成しました。この勝利により、ワールドカップおよび世界大会での個人勝利数は34に到達し、日本人最多クラスの記録に並んだとも報じられています。

以下は、2025年世界距離別選手権・女子1000mの上位3選手です(ISU公式結果をもとに作成)。

順位 選手 記録
1位 髙木 美帆 日本 1:14.75
2位 フェムケ・コック オランダ 1:14.90前後(公式リザルト参照)
3位 ユッタ・リールダム オランダ 1:15台前半(公式リザルト参照)

2025年世界距離別スピードスケート選手権 女子1000m 表彰台(ISU公式結果をもとに編集)

1000mではオリンピック記録保持者であり、世界選手権連覇中。1500mでも世界トップクラスの一角を占め続ける髙木は、ミラノ・コルティナ2026でも複数種目で金メダル候補に挙げられる存在です。特に1000mは「髙木が基準」であり、他選手がそれをどこまで追いかけられるかという構図になりつつあります。

堀島行真――世界選手権二冠(モーグル+デュアル)で見せた「完成度」

フリースタイルスキー・モーグルの堀島行真は、北京2022で男子モーグル銅メダルを獲得した日本のエース。ワールドカップでもシーズンを通してクリスタルグローブ争いを演じてきましたが、2024/25シーズンと2025年世界選手権で、その実力を改めて世界に証明しました。

2024/25シーズンのFISフリースタイルスキー・ワールドカップでは、名門ディアバレー(米国)や中国・北大壺(ベイダフ)でのモーグル戦を制し、世界最強のモーグラーの一人であるミカエル・キングズベリーと激しい首位争いを展開。シーズン後半になるほど演技構成と安定感が増し、「勝負どころで最高の1本を出せる」アスリートとして評価を高めました。

その集大成となったのが、スイス・エンガディン(サンモリッツ)で行われた2025年世界選手権です。男子モーグル決勝では、ファイナル2(スーパー決勝)で高難度のエアとスピードを完璧にまとめ89.03ポイントをマークし、堅実な滑りを見せたキングズベリーを抑えて金メダル。さらにデュアルモーグルでも銀メダルを獲得し、個人2種目で世界選手権二冠(モーグル金&デュアル銀)という結果を残しました。

男子モーグル世界選手権決勝の表彰台は次の通りです(FIS公式リザルトより)。

順位 選手 最終得点(Final 2)
1位 堀島 行真 日本 89.03
2位 ミカエル・キングズベリー カナダ 82.68
3位 チョン・デユン 韓国 81.76

2025年FISフリースタイルスキー&スノーボード世界選手権 男子モーグル決勝(FIS公式結果をもとに編集)

堀島の強みは、難度の高いエアを入れたうえで、ターンの質とスピードも高レベルで両立させられる「完成度」にあります。世界選手権でキングズベリーを破ったことで、自身も「金メダルを狙う側」から「金メダルを追われる側」へと立場が変わりました。ミラノ・コルティナ2026では、悲願のオリンピック金メダルを目指すシーズンが続きます。

平野兄弟&ハーフパイプ新世代――ワールドカップとSnow Leagueで存在感

スノーボード・ハーフパイプでも、日本勢は世界の主役級です。北京2022男子ハーフパイプ金メダリストの平野歩夢に加え、弟分とも言える平野流佳、そしてXゲームズでも実績のある平野海祝ら「平野三兄弟的」な存在が世界を相手に戦っています。

2024/25シーズンのFISスノーボード・ハーフパイプワールドカップでは、平野流佳がシーズン最終戦カルガリーで圧勝し、男子ハーフパイプのクリスタルグローブ(種目別年間王者)を獲得。これで3シーズン連続の種目別総合優勝となり、日本男子の「安定して強い世代」の象徴となりました。

世界選手権2025男子ハーフパイプ(スイス・コルヴァッチ)では、スコッティ・ジェームズ(オーストラリア)が金メダル、平野流佳が銀メダル、戸塚優斗が銅メダルと、日本勢が再び表彰台の大半を占める結果に。ワールドカップでもコッパーやアスペンで日本勢による表彰台独占が続き、男子ハーフパイプは実質的に「日本 vs 世界」という構図になりつつあります。

一方の平野歩夢は、従来のワールドカップだけでなく、ショーン・ホワイトが立ち上げた新リーグ「Snow League」にも参戦。世界中のトップハーフパイプライダー36人が集うこのシリーズでは、アスペンや中国・張家口、ラアックスなど、冬季オリンピックとも縁の深い会場でハイレベルな戦いが繰り広げられています。オリンピック金メダリストの歩夢に加え、流佳、海祝、さらには小野光希や冨田せなといった日本勢が多数エントリーしており、ミラノ・コルティナへ向けた実戦の場としても注目度が高いシリーズです。

ミラノ・コルティナ2026へ――「いま」から追っておきたい日本勢

小林陵侑、髙木美帆、堀島行真、そして平野兄弟とハーフパイプ新世代。彼らはいずれも北京2022ですでにメダルを獲得している、あるいはその直後から世界のトップクラスに定着している選手たちです。それでも、2024/25シーズン以降の戦いぶりを見ると、「キャリアのピークをミラノ・コルティナ2026に合わせつつある」ことが、戦績と滑り(あるいは走り)から伝わってきます。

冬季オリンピックは4年に一度ですが、その裏側では毎年のワールドカップや世界選手権で、技術と戦略がアップデートされ続けています。本稿で取り上げたような最新トピックスを追いながら、ミラノ・コルティナ2026での「日本勢が金メダルを取り切る瞬間」をイメージしておくと、今シーズンからの観戦もずっと立体的に楽しめるはずです。