なでしこジャパンの20歳MF、谷川萌々子が所属クラブのFCバイエルン・ミュンヘンで存在感を一気に高めている。昨季はスウェーデンのFCローゼンゴードでボランチながら20試合16得点の活躍で得点王&リーグ優勝を達成し、今季はバイエルンに復帰。ここ数試合は、欧州最高峰の女子チャンピオンズリーグ(UWCL)と女子ブンデスリーガの両方でゴール・アシストを量産し、「クラブの攻撃の軸」と言っていいパフォーマンスを見せている。
CLパリSG戦で決勝ゴール――欧州の大舞台で見せた“3人抜きゴラッソ”
転機となったのが、現地時間11月20日に行われたUWCLリーグフェーズ第4節、パリ・サンジェルマン(PSG)戦だ。敵地パルク・デ・プランスでの一戦で、バイエルンは開始16分に先制を許す苦しい展開となったが、すぐさまリンダ・ダルマンのゴールで同点に追いつく。
そして前半34分、勝敗を分けたのが谷川の一撃だった。左サイドからのパスをペナルティエリア左で受けると、細かいタッチでディフェンダーをかわしながら中央へ侵入。マーカーを次々と外し、最後は右足でゴール天井に突き刺す決勝弾。3人を抜き去るドリブルからのスーパーゴールは欧州メディアやサポーターの間でも大きな話題となり、「世界レベルの個人技」「女子版ムシアラ」といった声も上がった。
試合はその後もバイエルンが主導権を握り、終盤にヨバナ・ダムヤノヴィッチがダメ押しゴール。PSG 1-3 バイエルンと逆転勝利を収め、谷川は“CL初ゴール”を決勝点という最高の形で記録した。
ブンデス第11節ホッフェンハイム戦では2ゴール1アシスト――4得点に絡む圧巻のパフォーマンス
CLでのゴラッソから中2日、11月23日に行われた女子ブンデスリーガ第11節、ホッフェンハイム戦でも谷川は“主役”だった。バイエルンは開始10分にPKで先制を許すも、30分に同点ゴールを奪う。この場面で、ペナルティエリア手前の浮き球を収めたのが谷川。巧みなダブルタッチで相手DFの股を抜くと、そのボールを拾ったジョージア・スタンウェイが右足で流し込み、同点弾が生まれた。
後半に入るとバイエルンの攻撃は完全にスイッチが入り、谷川がゴールラッシュの中心に立つ。2-1で迎えた後半11分、ペナルティエリア手前でボールを受けると、フィジカルコンタクトでDFとの競り合いに勝ち、右足のシュートをゴール右に突き刺して追加点。続く29分には、スルーパスに抜け出して右足のダイレクトシュートを沈め、この日2点目をマークした。
さらに80分には、強烈なミドルシュートからGKが弾いたこぼれ球を味方が押し込んで5点目。記録上は2ゴール1アシストだが、実質4得点すべてに絡む働きで、5-1の大勝と公式戦10連勝の立役者となった。
直近の主なクラブでの活躍(2025年11月)
※スコアと得点者は各大会公式サイト・クラブ公式発表に基づく要約です。
| 日付 | 大会/カード | スコア | 谷川の結果 |
|---|---|---|---|
| 11月23日 | 女子ブンデス第11節 ホッフェンハイム vs バイエルン |
1-5 | 先発出場/2ゴール1アシスト 4得点すべてに絡む活躍 |
| 11月20日 | UWCLリーグフェーズ第4節 PSG vs バイエルン |
1-3 | 先発出場/決勝ゴール エリア内で2〜3人をかわしてゴラッソ |
ローゼンゴードでの“点取り屋ボランチ”から、バイエルンの攻撃の心臓へ
谷川の「点も取れるボランチ」というスタイルは、スウェーデンのローゼンゴード時代から際立っていた。期限付き移籍で臨んだ2024シーズン、ボランチを主戦場としつつもリーグ20試合16得点で得点王に輝き、チームを開幕連勝街道に乗せて優勝に導いた経歴を持つ。
JFAアカデミー福島で培った両足のキック精度と、ゴール前での落ち着きはバイエルンでも健在。今季はより前目のポジションで起用される場面も増え、「8番」と「10番」のハイブリッドのような役割を担っている。自陣からのビルドアップに顔を出しつつ、最後はペナルティエリア内でフィニッシュまで関わる――そのプレーエリアの広さが、バイエルンの連勝を支える大きな要素だ。
“なでしこ新エース”への期待――クラブで磨かれる強度と決定力
CLパリSG戦の決勝弾や、ホッフェンハイム戦の2ゴール1アシストが象徴するのは、単なる好調以上の変化だ。以前から左右両足のシュートレンジとアイデアあふれるラストパスは評価されていたが、今季のバイエルンでは球際の強度や守備での貢献度も大きく向上している。
中盤でボールを奪い切ってそのまま前進するプレー、狭い局面でのターンやダブルタッチで圧力をいなす技術は、男子ブンデスと比べても遜色ないテンポの女子ブンデスで磨かれたものだ。こうした強度の中で「当たり前のように結果を出し続ける」経験は、なでしこジャパンにとっても大きな財産になる。
パリ五輪での劇的なブラジル戦決勝弾に続き、今度はクラブで欧州の強豪クラブ相手にゴールを量産する谷川。クラブでのポジション取りや役割は、そのままなでしこジャパンの攻撃デザインにも直結していくだろう。インサイドハーフとしてボールを引き出し、敵陣のハーフスペースで前を向き、最後は自らゴールに迫る――そんなイメージを、今のクラブでのプレーははっきりと示している。
