【ノルディック複合W杯ルカ開幕】渡部暁斗“ラスト五輪シーズン”始動 世界の勢力図と日本勢の現在地

WINTER SPORTS

2025年11月28日

ノルディック複合ワールドカップ2025/26シーズンが、フィンランド北部のルカでいよいよ開幕します。クロスカントリー、ジャンプ、ノルディック複合のワールドカップが一気にスタートする「Ruka Nordic」の中でも、特に注目を集めるのが男子ノルディック複合。37歳になったレジェンド渡部暁斗にとっては、ミラノ・コルティナ2026へと続く“ラスト五輪シーズン”の初戦です。

ルカで開幕するノルディック複合W杯2025/26

ルカでは11月末の3日間で、ノルディック複合の個人戦が3レース組まれています。FIS公式のプログラムによると、ラージヒル(HS142m)を使ったコンパクト(7.5km)・グンデルセン(10km)・マススタート(10km)というバリエーションで、ジャンプとクロスカントリーの両面が試される開幕シリーズです。

Ruka Nordic 2025 ノルディック複合 男子ワールドカップ日程(現地時間)
日付 種目 形式 スタート時刻(CET)
11月27日(木) 男子ラージヒルPCR 予備ジャンプ 13:00
11月28日(金) 男子個人 ラージヒル ジャンプ 12:15
11月28日(金) 男子個人コンパクト ラージヒルHS142 / 7.5km 15:15
11月29日(土) 男子個人 ラージヒル ジャンプ 10:15
11月29日(土) 男子個人グンデルセン ラージヒルHS142 / 10km 14:35
11月30日(日) 男子個人マススタート クロスカントリー10km 09:00
11月30日(日) 男子個人 ラージヒル ジャンプ 13:00

ルカは横風の影響を受けやすい大型ラージヒルと、アップダウンのきついクロスカントリーコースが特徴。近年はドイツ、ノルウェー、オーストリア勢が強さを見せる一方で、2017年には渡部暁斗もここで勝利しており、「レジェンドにとって相性の良い会場」としても知られています。

渡部暁斗、“ラスト五輪シーズン”へ――6度目の五輪と有終の美

FIS公式インタビューによれば、渡部暁斗は2025年トロンハイム世界選手権を最後に世界選手権から退き、その翌シーズンである2025/26シーズンを現役ラストシーズンと位置づけていると語っています。ミラノ・コルティナ2026は自身6度目の五輪であり、「最後の五輪」「キャリアの締めくくり」として臨む覚悟を明かしました。

渡部のこれまでの実績を改めて整理すると、

  • ワールドカップ通算勝利数:19勝
  • ワールドカップ個人表彰台:70回以上
  • ワールドカップ総合優勝:1回(2017-18シーズン)
  • 世界選手権メダル:5個(金1・銀1・銅3)
  • オリンピックメダル:4個(銀2・銅2/うち銅2つは北京2022で獲得)

と、まさに「日本ノルディック複合の顔」と呼ぶにふさわしいキャリアです。トロンハイム2025世界選手権では体調不良や胸膜炎に苦しみながらも復調の兆しを見せ、「ジャンプ技術のアップデート」と「道具の進化への対応」を課題として挙げています。ラストシーズンの開幕となるルカは、そうした“新しい渡部”がどこまで戦えるのかを占う最初の試金石になりそうです。

データで見る現在の勢力図:昨季W杯総合ランキング

ここで、ノルディック複合男子の2024/25シーズン ワールドカップ総合ランキング(FIS公式カップスタンディング)を振り返っておきます。ノルウェーのリーベルとドイツ・オーストリア勢が上位を占める一方で、日本勢も上位グループのすぐ後ろにつけています。

2024/25 ノルディック複合W杯 男子総合ランキング 上位5選手
順位 選手 総合ポイント
1位 ヤール・マグヌス・リーベル ノルウェー 1,870
2位 ステファン・レッテネッガー オーストリア 1,530
3位 ヨハネス・ランパルター オーストリア 1,456
4位 ヨーヘン・グラーバク ノルウェー 1,350
5位 クリスティヤン・イルヴェス エストニア 1,207

日本勢に目を向けると、総合ポイント上では以下のような位置づけでした。

2024/25 ノルディック複合W杯 男子総合ランキング 日本勢
総合順位 選手 総合ポイント 補足
21位 山本 涼太 467 ベストジャンパートロフィー8位(969pt)
22位 渡部 暁斗 460 総合トップ20目前の位置でシーズンを終える
39位 渡部 善斗 112 弟・善斗もワールドカップで安定してポイント獲得
42位 谷地 宙 101 ジャンプ力を生かしてベストジャンパー34位(197pt)

数値だけを見れば、依然としてリーベルやドイツ勢が“一歩抜け出している”構図ですが、ジャンプの得点だけに限れば山本・谷地・渡部兄弟を中心とした日本勢は世界トップレベル。開幕のルカは、ジャンプ重視のコンディションになればなるほど日本勢に追い風となりそうです。

日本勢の注目ポイント:ジャンプ力とチームとしての厚み

FISの記事でも、「日本チームはジャンプヒルでの強さが際立っている」と繰り返し紹介されています。山本涼太は過去にベストジャンパートロフィーのタイトルを獲得しており、トロンハイム2025世界選手権ではミックス団体でメダル争いに絡む活躍を見せました。

女子では、世界選手権で初代女王となった葛西優奈、ワールドカップ複数勝利の葛西春香ら若い世代が台頭。ルカの大会は男子のみですが、「日本=ジャンプが強い」というイメージは男女共通で、渡部自身も「チームメイトのジャンプから刺激を受けている」と語っています。

今季のルカでは、

  • 渡部がどこまで総合優勝争いに絡める状態まで戻せているか
  • 山本・谷地らがジャンプでどれだけリードを作れるか
  • グンデルセンやマススタートで、クロスカントリー力で勝る欧州勢をどこまで抑えられるか

といったポイントに注目したいところです。特にラージヒルHS142mでのコンパクトとグンデルセンは、高い飛距離と着地の安定感が求められるため、「ジャンプ日本」としての強みを活かしやすい舞台と言えます。

“最後の物語”はここから――ラストシーズン初戦としての意味

渡部はFISのインタビューで、「技術は自分の“全盛期”から比べると古くなっているが、まだ改善できることがたくさんある」と語り、道具やフォームのアップデートに強い意欲を見せています。ミラノ・コルティナでは、初優勝を挙げたヴァル・ディ・フィエンメでの五輪という因縁の舞台が待っており、「初優勝の地で最後の勝利を挙げられたら最高の終わり方」ともコメントしています。

その“ラスト物語”の最初の1ページが、今週末のルカ。結果以上に、ジャンプとクロスカントリーの内容、そしてレース後の本人の表情や言葉に耳を傾けたい開幕戦です。

動画でルカと渡部を予習しよう

最後に、開幕戦をより楽しむための公式動画をピックアップしました。大会前の“予習”にどうぞ。

FIS Nordic Combined公式YouTubeより、「Highlights | Akito Watabe goes solo in Gundersen #2 at Ruka」。ルカでの渡部暁斗の走りがぎゅっと詰まったハイライトで、開幕戦のイメージトレーニングにもぴったりの一本です。