陸上女子400m界に、鮮烈なニュースターが現れました。日本体育大学に在学中の青木アリエ選手です。2025年5月、17年間更新されなかった日本記録を上回るタイムを叩き出すと、6月には日本国籍を取得。日の丸を背負う強い決意と共に、世界陸上、そしてその先のロサンゼルスオリンピックを見据えています。彼女の強さの背景と、日本代表にかける熱い想いに迫ります。
衝撃の日本記録超え。17年の時を動かしたスプリンター
2025年5月3日、静岡国際陸上。女子400m決勝で、陸上ファンが息を呑む快走が生まれました。当時フロレス・アリエの名前で出場した彼女が記録したタイムは「51秒71」。これは、2008年から長らく日本の最高記録として刻まれてきた51秒75を0.04秒上回る、歴史的なタイムでした。
高校時代から短距離で活躍し、400mに本格的に取り組むと才能が一気に開花。大学進学後も着実に力をつけ、ついに日本の頂点に立つタイムを記録しました。この一走りで、彼女は女子400m界の未来を担うエース候補として、その名を全国に轟かせました。
「恩返しをしたい」日の丸に込めた感謝と決意
ペルーにルーツを持つ彼女は、競技者として高みを目指す中で、日本代表として世界で戦うことを強く志すようになります。
「自分が国籍を取るまで、色々な方々が自分のために動いてくださいました。すごくお世話になった方たちがたくさんいるので、その人たちに恩返しができるような走りをしていきたい」
インタビューでそう語る彼女の言葉からは、周囲への深い感謝が伝わってきます。多くのサポートを経て、2025年6月、ついに日本国籍を取得。「青木アリエ」として、新たなスタートを切りました。
初めて日本代表の赤いユニフォームに袖を通した際には、「普段は大学の青いTシャツなので真逆の赤は少し不安だけど、日本の代表になれたんだなと実感が湧きました」と、はにかみながらも喜びを語りました。そのユニフォームは、彼女にとって多くの人の想いが詰まった、特別な一着なのです。
見据えるは世界の舞台、ロサンゼルスへ
日本代表として世界陸上にも出場し、世界の強豪たちと渡り合った青木選手。彼女が次に見据えるのは、2年後のロサンゼルスオリンピックです。
日本選手権とは異なる世界大会の雰囲気を「逆にリラックスして楽しめる」と語る強心臓の持ち主でもあります。これまでの経験を自信に変え、世界の舞台で最高のパフォーマンスを発揮することを目指しています。
感謝の気持ちを力に変えて走る、女子400m界の新エース・青木アリエ選手。彼女が世界のトラックを駆け抜ける姿から、今後も目が離せません。
青木アリエ
2004年6月4日生まれ、静岡県出身の日本体育大学所属・女子400m選手で、自己ベストは51秒71(2025年5月・静岡国際)、2025年6月に日本国籍を取得し、2025年8月のブダペスト世界陸上選手権に出場。