SNSがつくる新しいスター像 ― 冬季アスリートと“つながる”時代
テレビで競技を観るだけの時代は終わり、ファンはスマートフォンを通じてアスリートの日常や 本音に触れられるようになった。SNS は、冬季競技のスター像を大きく変えつつある。 そこに生まれる光と影、そして新しい可能性について考えてみたい。
■ 「結果」だけではなく「人柄」が伝わる時代
かつては、アスリートの印象のほとんどが試合中の映像やインタビューによって決まっていた。 しかし今は、トレーニング風景、遠征先でのオフショット、チームメイトとのやり取りなど、 日常の断片がSNSを通じてリアルタイムに共有される。
その結果、ファンは「成績の良し悪し」だけでなく、 人としての魅力や価値観に共感して応援するようになってきた。 ちょっとしたコメントやスタンプひとつが、応援する気持ちをさらに強くしてくれることもある。
■ ハイライト動画が生む“瞬間的バズ”
スノーボードのビッグエアやハーフパイプ、フリースタイルスキーのモーグルやスロープスタイル――。 冬季競技の多くは、 「数秒間のハイライト」で一気に世界中に共有される時代になった。
SNS上で拡散されるスロー映像や空撮映像は、競技を知らない人の目にも届き、 「あの技がすごかった」「この選手かっこいい」という、入口としての “一目惚れ”のきっかけを生んでいる。
■ アスリート自らが語る「物語」
SNSの大きな変化のひとつは、アスリート自身が自分の物語を発信できるようになったことだ。 試合後の想い、ケガの不安、日々の迷いや葛藤――。 これまではメディアを通して一部が切り取られていたものが、 より本人の言葉で、直接ファンに届くようになった。
それはときに、結果以上に多くの共感や励ましを呼び、 「この選手をずっと応援したい」という長期的なファンを生み出していく。
■ 「近さ」が生むプレッシャーというリスク
一方で、距離が近くなったことで生まれる課題もある。
- ● 試合直後から大量のコメントやメッセージが届く
- ● ポジティブな応援だけでなく、厳しい言葉や誹謗中傷も混じる
- ● 常に「発信し続けなければいけない」というプレッシャー
特に若いアスリートにとって、SNSとの付き合い方は大きなテーマになっている。 チーム・連盟・エージェントなどが一緒にルールや方針を考え、 「守られながら、上手に活用する」体制づくりが求められている。
■ ファンとの双方向コミュニケーション
SNSは、ファンが一方的に情報を受け取るだけの場ではない。 質問に答えるライブ配信、コメントへの返信、スタンプでのリアクション――。 小さなやりとりの積み重ねが、 「この選手は自分たちの声をちゃんと見てくれている」という実感につながる。
こうした双方向のコミュニケーションは、 現地観戦が難しいファンや海外のファンにとって、 アスリートとの距離を一気に縮めてくれるものでもある。
■ スポンサー・競技団体にとっての新しい価値
SNSでの存在感は、スポンサーにとっても大きな指標になっている。 フォロワー数やエンゲージメントはもちろん、 「どんなメッセージを発信しているか」「どんなコミュニティを持っているか」 といった質の部分も重視され始めている。
競技団体や大会運営側にとっても、SNSは重要な広報ツールだ。 試合結果やハイライト映像だけでなく、舞台裏や地域の魅力を伝えることで、 大会そのものの価値を高めていくことができる。
どう使うか次第で、ファンとの関係も、競技の未来も大きく変わっていく。 ――大切なのは、「競技」と「人」と「ネット」を、無理なくつなぐバランス感覚なのかもしれない。
