新興国の躍進と広がる冬 ― グローバル化する冬季競技のいま
「冬季スポーツ=ヨーロッパと北米」という時代は、少しずつ変わりつつある。アジア、オセアニア、南米――。 気候も文化も異なる地域から、新しいスターたちが次々と現れている。その流れの中で、 日本のアスリートはどんな位置に立ち、どんなライバルたちと世界を争うのか。
■ 冬季競技の「地図」が書き換わっている
かつて冬季競技のメダル争いは、北欧やアルプス地域、北米の強豪国が中心だった。 しかし近年、アジアやオセアニア、さらには雪と縁が薄かった地域からもトップアスリートが登場し、 競技そのものの勢力図が塗り替えられつつある。
その背景には、屋内リンクや人工雪技術の普及、国際大会の配信環境の充実、 そしてSNSを通じた「憧れの共有」がある。冬のスポーツは、もはや「雪国だけのもの」ではない。
■ 日本の若手と“世界の新顔”たち
日本はこれまでも、フィギュア、スピードスケート、ジャンプ、スノーボードなど、 多くの競技で世界トップクラスの選手を輩出してきた。その一方で、 近年はアジアの他国やオセアニア、南米などからも、個性豊かなスターたちが現れている。
ここでは、日本の注目選手と、新興国・多様な地域から台頭してきた海外選手を“対話”させるように見ていきたい。
■ 日本の注目選手:川村あんりと岩渕麗楽
モーグルの川村あんりは、10代からワールドカップの表彰台に立ち続けてきた新世代のスターだ。 正確でスピード感のあるターンと、高い難度のエアを兼ね備え、安定感と攻めのバランスに優れている。 その笑顔と堂々とした受け答えは、海外メディアからも高い評価を受けている。
スノーボードの岩渕麗楽は、ビッグエア&スロープスタイルを主戦場に、 高さのあるジャンプとチャレンジングな技で世界を驚かせてきた。メダルを狙える実力を持ちながら、 結果よりも「納得のいく滑り」を追い求める姿は、多くのファンの心をつかんでいる。
この二人は、日本の技術力とメンタルの強さを体現する存在であり、 ミラノ=コルティナに向けた日本チームの“顔”の一部と言えるだろう。
■ アジアの新星:雪国以外からの挑戦
かつてアジアで冬季スポーツと言えば日本や韓国が中心だったが、 近年は中国やその他の地域からも有望選手が登場している。
- ● スノーボード・ビッグエア/スロープスタイルで存在感を示す中国の若手ライダー
- ● インドや中東出身で、ヨーロッパのクラブに拠点を置いて競技を続ける選手たち
こうした選手たちは、多くの場合、国内に十分な環境がない中で海外へ渡り、 トレーニング拠点やコーチを自ら探しながらキャリアを築いている。 その挑戦は、「雪国でないと冬季競技はできない」という固定観念を静かに塗り替えている。
■ オセアニアの波:南半球から世界へ
ニュージーランドやオーストラリアは、南半球の雪山を活かしてスノーボードやフリースタイルの強豪国として台頭してきた。 夏と冬が北半球と逆になるため、「北半球のシーズンオフに南半球で練習する」流れも一般的になっている。
スロープスタイルやビッグエアでは、ニュージーランドの若手ライダーたちが、 Xゲームやワールドカップでたびたび表彰台に上っている。彼らの存在は、 岩渕麗楽のような日本のライダーにとっても、刺激的なライバルであり良き仲間だ。
■ 南米からの挑戦:雪の少ない国のストーリー
南米でも、チリやアルゼンチンといったアンデス山脈を抱える国々を中心に、 スキーやスノーボードの選手が国際舞台で活躍し始めている。
彼らは「国内の雪山」「北半球への遠征」「スポンサー探し」といった複数のハードルを乗り越えながら、 それでも冬季競技を選んだアスリートたちだ。雪の少ない国であるほど、 一人ひとりのストーリーには強い意思と情熱が詰まっている。
■ 日本と世界、“追う側”と“追われる側”が混ざり合う
日本は、多くの競技で「追う側」から「追われる側」へと立場を変えつつある。 その一方で、種目やカテゴリーによっては、まだまだ新興国と同じように挑戦者でもある。
例えば、モーグルでは堀島行真や川村あんりが世界のトップと肩を並べ、 スノーボードでは平野歩夢や岩渕麗楽が“大会の主役”として注目される一方で、 新しい種目や新しいスタイルの中では、海外選手に学ぶ部分も少なくない。
「強豪国でもあり、新興勢力でもある」――。 その“中間的なポジション”こそ、日本の面白さでもある。
さまざまな国や文化から集まった選手たちが、同じ雪の上で挑み合う――。
その風景自体が、スポーツが持つ力を静かに物語っている。 ――日本の選手たちは、これからもその中心で、世界とともに冬の物語を紡いでいく。
