2030年、その先の札幌 ― 日本の冬季スポーツが描く未来図

WINTER SPORTS

2025年11月17日

COLUMN 10
SAPPORO
FUTURE

2030年、その先の札幌 ― 日本の冬季スポーツが描く未来図

札幌 レガシー 日本の冬季スポーツの未来

1972年の冬季オリンピックから半世紀あまり。札幌は、日本の冬季スポーツを支える「拠点」であり続けてきた。 2030年という節目と、その先の未来を思い描くとき、私たちはどんな街と競技の姿を望むのだろうか。

■ 1972年から続く「冬の首都」としての記憶

1972年の札幌オリンピックは、日本にとって初めての冬季五輪だった。 それから今日に至るまで、札幌はジャンプ台、スケートリンク、スキー場など、 多くの競技施設を活かしながら、国内外の大会を支えてきた都市だ。

長い年月の間に施設の老朽化や環境の変化と向き合いながらも、 「冬季スポーツのまち」というアイデンティティは、世代を超えて受け継がれてきた。 2030年、その先を考えるうえで、このレガシーの存在は避けて通れない。

■ 2030年を“終点”ではなく“通過点”にする発想

2030年という年は、しばしば「大きな目標」として語られる。 しかし、札幌にとって本当に大切なのは、特定の年に大会を開くことそのものではなく、 「2030年を境に、冬季スポーツの未来が加速していくかどうか」だ。

たとえ大きな国際大会の開催が実現するかどうかに関わらず、 札幌が日本の冬季競技にとってのハブであり続けるためには、 長期的な視点での施設整備や人材育成、環境への配慮が不可欠になる。

■ 札幌が担うべき3つの役割

未来の札幌を考えるとき、次の3つの役割が見えてくる。

  • 競技拠点:日本代表やジュニアが集い、世界基準のトレーニングができる場所
  • 市民スポーツの場:子どもから大人まで、日常的に冬のスポーツを楽しめる場
  • 国際交流のステージ:海外のチームやファンが行き交い、文化が交差する場所

この3つは、どれかひとつだけを選ぶものではなく、重なり合いながら街の価値を高めていく要素だ。

■ レガシー施設を「アップデート」するという考え方

既存のジャンプ台やスケートリンク、屋内外のスキー場は、 そのままではなく「アップデートして使い続ける」時代に入っている。

省エネ設備の導入、バリアフリー化、デジタル技術を使った観戦体験の向上――。 新しく建て直すのではなく、「今あるものを未来仕様に」変えていくことが、 サステナブルな冬季スポーツのカギになる。

■ 子どもたちの「最初の一歩」をどれだけ増やせるか

日本の冬季競技の強さは、地域クラブや学校の部活動、ジュニア育成の土台に支えられている。 札幌はそのモデルケースになり得る街だ。

放課後にスケートリンクで滑る、週末に家族でゲレンデに出かける、 オリンピアンのトークイベントやクリニックに参加する――。 そんな「最初の一歩」を踏み出す子どもが増えるほど、10年、20年後の日本代表は厚みを増していく。

■ デジタルと冬季スポーツの融合

2030年を見据えると、デジタル技術との融合も欠かせないテーマになる。

  • VRやARを使った“バーチャル観戦”
  • データ解析によるフォーム改善や戦術分析
  • オンラインでのトレーニング指導やセミナー

これらは、札幌に来られない人たちとも冬季スポーツの魅力を共有するためのツールでもある。 「現地での体験」と「オンラインの体験」を組み合わせることで、 競技の裾野はさらに広がっていくだろう。

■ 札幌から、日本の冬季スポーツ全体へ

札幌の取り組みは、北海道や東北、長野、北陸など、他の雪国ともつながっていくべきものだ。 コーチや指導者の交流、合同合宿やリーグ戦の開催、情報やノウハウの共有――。

「札幌だけが強くなる」のではなく、 「札幌をハブに、日本全体の冬季スポーツが底上げされる」ような仕組みをつくることが、 2030年以降の大きなテーマになるだろう。

2030年という年は、ゴールではなく新しいスタートラインになり得る。
過去のレガシーを大切にしながら、次の世代にどんな冬を手渡していくのか。
――札幌の未来を考えることは、日本の冬季スポーツの未来を考えることとほぼ同じ意味を持っている。