ニューヨーク・メッツの千賀滉大と、サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有。
ともにメジャーでローテーションの軸を担ってきた日本人右腕ですが、2025年オフの二人は、まったく違う「分かれ道」に立っています。
千賀はメッツの先発再編に伴うトレード候補の筆頭と報じられながら、「できればニューヨークに残りたい」と球団に伝えたとされる一方で、ダルビッシュはメッツ相手の7回無失点で日米通算204勝の新記録を打ち立てたシーズンの後、右肘の手術で2026年シーズン全休が決定しました。
千賀滉大「メッツに残りたい」──それでも名前が挙がるトレード市場
11月以降、複数の米メディアが「メッツは千賀滉大を“非常にトレードしやすい(extremely available)”状態に置いている」と報道。ローテーション再編と年俸バランスの見直しを背景に、先発投手の補強を狙う球団に向けて、積極的に売り込みが行われていると伝えられています。
一方で、一部報道では、千賀本人が「可能ならメッツに残りたい」という意向を球団側に伝えているとも。さらに契約には一部球団へのトレード拒否権が含まれているとされており、千賀側も完全に受け身というわけではありません。
契約条件は、5年総額7500万ドルのうち残り2年で約2800万ドル+2028年のクラブオプションという構造。実績からすれば「割安」と見る球団も多く、右腕先発を必要とするチームからの需要は高いとみられています。
2025年の千賀滉大:数字だけ見れば“依然トップ級”
2025年シーズンの千賀は、ハムストリングの故障による離脱と、その後の不振もあり一時は3Aシラキュース行きを経験しました。それでもレギュラーシーズンのトータルでは、
- 7勝6敗
- 防御率3.02
- 奪三振109、WHIP 1.31
と、数字そのものは依然としてリーグ平均を大きく上回る内容でした。
メジャー通算では、2023〜25年の3シーズンで
- 通算成績:20勝13敗、防御率3.00、奪三振320
- 2023年は新人王投票2位
と、「メジャーでもエース級」と言って差し支えない成績を残しています。
メッツの立場:勝ちにいくのか、再編するのか
メッツは2025年、ナ・リーグ東地区で83勝79敗・勝率.512と、勝ち越しながらも地区優勝とポストシーズン深度には物足りない結果に終わりました。
来季以降もファームの有望投手+既存のベテランという組み合わせでローテを組むのか、それとも千賀を駒にして「若くて安い先発」を増やすのか──。千賀放出の是非は、メッツという球団が“今勝ちにいくのか/数年先を見て組み直すのか”という方向性と直結していると言えます。
ダルビッシュ有、メッツ相手の7回無失点で日米通算204勝に到達
一方のダルビッシュ有は、シーズン序盤を右肘の炎症で離脱し、7月に復帰。その3度目の先発となった7月30日のメッツ戦で、7回を投げて2安打無四球・7奪三振の快投。パドレスの5−0勝利を導き、この試合で日米通算204勝目をマークしました。これは黒田博樹(203勝)を抜いて、日本人投手として最多の勝利数となる大記録です。
パドレスはこのカードでメッツを3連戦スイープ。トレードデッドライン直前の重要なタイミングで、ダルビッシュの復活が「パドレスは完全に買い手」であることをリーグに印象づける形にもなりました。
2025年ダルビッシュの成績と、その先にある“ブランク”
2025年レギュラーシーズンでのダルビッシュは、故障明けということもあり
- 15試合登板、5勝5敗
- 防御率5.38
- 投球回72.0、奪三振68、WHIP 1.18
と、数字だけを見ると“らしくない”部分も残しました。それでも重要なカードでの好投や、ポストシーズンでの先発など、要所では存在感を発揮しています。
しかしシーズン終了後、右肘の内側側副靱帯に対するインターナルブレース手術を受けたことが明らかに。リハビリには12〜15カ月を要すると見られ、2026年シーズンは全休の見込みです。
ダルビッシュは2025年終了時点でMLB通算115勝、日本ハム時代を含めた日米通算204勝のレジェンド。40歳を目前にした長期契約の中で、再びマウンドに戻ることができるのか──ここからの2年間は、単なる“一選手のリハビリ”を超えた注目を集めることになりそうです。
パドレスの2025年:ダル復帰もありつつ地区2位フィニッシュ
パドレスは2025年、90勝72敗でナ・リーグ西地区2位フィニッシュ。ワイルドカードでポストシーズン進出を果たし、「タティスJr.&マチャドの看板野手+強力ブルペン+ベテラン先発陣」という形で再び“優勝候補の一角”に戻りました。
その中でダルビッシュは、登板数こそ限られながらも要所で流れを引き寄せる役割を担い、メッツ戦での204勝目は、ファンにとって象徴的な1試合となりました。
数字で見る「千賀×ダル」2025年シーズン比較
| 千賀滉大(メッツ) | ダルビッシュ有(パドレス) | |
|---|---|---|
| 所属チーム | ニューヨーク・メッツ | サンディエゴ・パドレス |
| 2025年成績 | 7勝6敗 / 防御率3.02 / 109奪三振 | 5勝5敗 / 防御率5.38 / 68奪三振 |
| WHIP | 1.31 | 1.18 |
| 主なトピック | トレード市場で「非常に出しやすい」と報道 / 本人は残留希望 | メッツ戦7回無失点で日米通算204勝 / シーズン後に肘手術で2026年全休へ |
| チーム成績 | 83勝79敗(ナ東2位) | 90勝72敗(ナ西2位) |
X・YouTubeで振り返る「千賀の去就」と「ダル204勝」
ここからは、両投手を巡る動きを追いかけた公式系アカウントのポスト/動画をピックアップします(埋め込みは環境によって表示に時間がかかる場合があります)。
千賀滉大の去就をめぐる動き(SNY公式)
ダルビッシュ204勝達成の現場から(AJ Cassavell記者)
パドレス vs メッツのハイライト動画(MLB公式)
コラム:千賀の“今”と、ダルビッシュの“これから”
千賀とダルビッシュは、ともにNPBで頂点を極め、メジャーに挑戦してきた日本人エースという点で共通しています。しかし今、千賀は「自分の意思とは別に動かされるかもしれない」立場に立ち、ダルビッシュは「自分の意思で決断した手術の先に何が待っているのか」を見つめています。
千賀にとってトレードは、プレーする環境や生活の基盤が一気に変わるイベントです。それでも、どのユニフォームを着ようと、“ゴーストフォーク”を武器に試合を支配できる投手であることに変わりはありません。メッツが本気で「今勝ちにいく」のであれば、彼を手放すリスクは決して小さくないはずです。
一方、ダルビッシュは204勝という前人未到の領域に到達したあとで、あえて長いリハビリの道を選びました。キャリアの晩年にこれだけの大手術を受けるというのは、普通であれば「引き際」を意識してもおかしくないタイミングです。それでも、彼は「まだ投げたい」という意思を示しています。
2026年、マウンドにダルビッシュの姿はありません。その空白を埋めるように、千賀を含めた次世代の日本人投手たちがメジャーの舞台でどんな足跡を残していくのか──。
千賀の去就とダルビッシュの復帰への道のりは、これから数年にわたって、日本とアメリカの野球ファンを引きつけ続けるテーマになりそうです。
