日本野球機構(NPB)は12月3日、12月9日に行われる「現役ドラフト」2025年版について、2巡目の運用規定を変更・明文化したと発表しました。これにより、2巡目では「自分は指名しない=獲得意思なし」でも参加表明が可能となり、いわゆる“放出目的”での参加が正式に認められる形になります。
NPBの保科求己法規室長は、「1件でも多く、1人でも多く成立させたいという選手会の要望もあり、12球団それぞれのニーズを生かせる形を目指した」と説明。日本プロ野球選手会の会沢翼会長も、「移籍成立を増やす一歩」と一定の評価を示しました。
何が変わる? 現役ドラフト2巡目ルールの“ビフォー/アフター”
今回のポイントは、2巡目における「参加資格」と「スタンス表示」が整理されたことです。これまでは、指名する意思がある球団だけが2巡目に参加できる形になっていましたが、今後は「指名するつもりはないが、自軍選手の放出はしたい」球団も参加可能になります。
| 項目 | 旧ルール(〜2024) | 新ルール(2025〜) |
|---|---|---|
| 2巡目参加条件 | 「指名意思を有する」と議長に通知した球団のみ参加 | 第1巡目終了後に A「参加(指名意思あり)」 B「参加(指名意思なし)」 C「不参加」 のいずれかをメールで通知 |
| 放出目的参加 | 実質的に想定されておらず、 ルール上も明文化されていなかった | B「参加(指名意思なし)」として、 自球団の選手を他球団に移籍させる目的で参加が可能 |
| 2巡目の実績 | 2022・23年は2巡目の指名なし。 2024年は広島のみ2巡目指名と、利用例が少なかった。 | 移籍成立件数を増やすことが狙い。 2巡目は「放出+獲得」の両方を柔軟に設計できる。 |
要するに、2巡目では
- 選手を取りたい球団……A「参加(指名意思あり)」
- 自チームの選手を出したい球団……B「参加(指名意思なし)」
- どちらも必要ない球団……C「不参加」
という3つのスタンスを事前に明示し、そのうえで2巡目の指名・放出を組み立てる方式になった、というイメージです。
そもそも「現役ドラフト」とは? これまでの実績をおさらい
現役ドラフトは、出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化することを目的に、2022年12月に初開催されました。各球団がリストアップした選手の中から、他球団が最低1人は獲得する仕組みで、ここ3年だけでも「新天地でブレークした成功例」が多数生まれています。
| 年 | 主な指名選手 | 移籍先 | 移籍後の主な実績 |
|---|---|---|---|
| 2022 | 大竹耕太郎(投手) | ソフトバンク → 阪神 | 翌シーズンに12勝を挙げ、阪神のリーグ優勝・日本一に大貢献。 |
| 2022 | 細川成也(外野手) | DeNA → 中日 | 中日で20本塁打超を放ち、中軸打者として定着。 |
| 2022 | オコエ瑠偉(外野手) | 楽天 → 巨人 | 一軍出場機会を増やし、代走・守備固め・スタメンと幅広く起用。 |
| 2023〜24 | 複数投手・野手 | 各球団間 | 中継ぎの駒不足解消や、控え内野手の出場機会拡大など「ピンポイント補強」として機能。 |
一方で、「2巡目」の指名はこれまでほとんど活用されておらず、制度はあるのに“動かない”レーンになっていたのも事実です。今回のルール明文化は、その“眠っていた2巡目”を本格的に動かすためのテコ入れと見ることができます。
選手会の視点:「1人でも多く、移籍成立を」
日本プロ野球選手会は、これまでも現役ドラフトについて
- 移籍成立件数を増やしたい
- 「塩漬け」状態の選手を減らしたい
- 若手〜中堅のキャリア形成を後押ししたい
という立場から、NPB側と協議を続けてきました。
今回の変更では、2軍タイブレーク制など他テーマへの懐疑的な意見を示しつつも、現役ドラフトの2巡目明文化については「移籍成立を増やす一歩」として評価。
球団側と選手側の利害が、珍しく“同じ方向”を向いたテーマと言えるかもしれません。
X・YouTubeで振り返る「現役ドラフト2巡目ルール変更」の反応
ここからは、なるべく公式・信頼性の高いアカウント中心に、今回の規定変更に関連するポストや解説動画をピックアップします(埋め込みは環境によって表示に時間がかかる場合があります)。
デイリースポーツオンライン:ルール変更の速報
のもとけさん:現役ドラフト日程&変更点まとめ
YouTube解説:2巡目拡大のインパクトを解説する動画
今回の変更で、現役ドラフトの2巡目はこれまでよりも確実に「動きやすい場」になります。とはいえ、
それでも“魔法の制度”にはならない
- 球団側には「他球団に出したくないが、戦力外にはしづらい」選手もいる
- 選手側には「現状維持を望む」ケースも少なくない
- 年俸やポジション、家族の事情など、単純な“出場機会”だけでは割り切れない要素がある
といった現実もあります。現役ドラフトは、あくまで選手移籍のひとつの選択肢であって、「これさえあれば全員ハッピー」という魔法の制度ではありません。
それでも、「控えのまま30歳を迎えるはずだった選手」が新天地でブレークした例を見れば、この制度が持つポテンシャルは明らかです。
今回の2巡目ルール明文化が、
- 「もう一度チャンスがほしい」選手
- 「あと1枚、右の中継ぎが欲しい」といった球団
を、これまで以上にうまく結びつけるきっかけになるのか──。
12月9日の現役ドラフト当日は、指名結果だけでなく「2巡目にどの球団がどんなスタンスで参加したか」にも注目してみてはいかがでしょうか。
