2025年11月28日、読売ジャイアンツはオコエ瑠偉外野手(28)を双方合意による自由契約とすると公式に発表しました。保留者名簿にあえて名前を載せず、海外リーグを含む他球団でプレーできるチャンスをつくる――NPBでも珍しい「前向きな自由契約」です。
異例の「前向きな自由契約」 球団発表のポイント
球団公式リリースによると、ジャイアンツとオコエはシーズン終了後から来季以降の活躍の場について繰り返し話し合いを重ね、「海外の野球リーグなど他球団でプレーできるチャンスを設けたほうが本人にとって良い」との結論に達しました。その結果、11月末に提出される保留者選手名簿に掲載せず、自由契約選手とする形が取られています。
通常、自由契約=「戦力外」のイメージが強い中で、今回は球団がリリースの中でも「今後も可能な限りサポートしていく」と明記。オコエ自身も「海外野球を含めた他チームへの挑戦ということを認めていただきました」と感謝のコメントを出しており、決別ではなく“背中を押す形の退団”と言ってよい内容です。
オコエ瑠偉という才能──甲子園スターから現役ドラフト組の象徴へ
オコエは1997年7月21日生まれ、東京都東村山市出身。ナイジェリア人の父と日本人の母を持ち、関東第一高時代には2015年夏の甲子園でベスト4入りを果たした外野手です。俊足と強肩、華のあるプレーで大会を沸かせ、一躍“高校野球の顔”となりました。
同年ドラフトでは東北楽天ゴールデンイーグルスから1位指名を受けてプロ入り。2022年オフには、出場機会の少ない選手の環境を変えることを目的とした第1回「現役ドラフト」で読売ジャイアンツが指名し、東京ドームを本拠地とする名門に活躍の場を移しました。
巨人移籍後は、代走・守備固め・スタメンとさまざまな役割を担いながら、俊足と広い守備範囲で存在感を発揮。2025年シーズンも61試合に出場して打率.246、0本塁打、5打点と、控えながらチームに貢献してきました。
記憶に残る一発──2024年9月7日 DeNA戦サヨナラ弾
オコエと言えば、多くのファンが真っ先に思い出すのが2024年9月7日・東京ドームでの横浜DeNA戦でしょう。巨人は1点ビハインドで迎えた9回に中山礼都の適時打で同点に追いつき、試合は延長戦へ。両軍救援陣が踏ん張り、スコアは2対2のまま延長12回裏、2死ランナーなしという「引き分け寸前」の場面でオコエに打順が回ってきます。
DeNAのマウンドには8番手・佐々木千隼。初球のストレートをフルスイングした打球は、左中間スタンド中段へ一直線。プロ9年目で初めてのサヨナラ本塁打は、4時間を超える死闘に幕を下ろす劇的な一発になりました。
翌月には、この本塁打が評価されて、月間「スカパー!サヨナラ賞」9・10月度のセ・リーグ受賞も決定。ヒーローインタビューでは、阿部監督から「ホームランで決めてこい」と背中を押されたことや、ティファニーとのコラボユニホームにちなんで「来年はティファニーのアンバサダーになれるように頑張ります」とコメントするなど、オコエらしい明るさで東京ドームを沸かせました。
2025年ジャイアンツの成績とオコエの立ち位置
2025年のセ・リーグは、阪神タイガースが2年連続で優勝。ジャイアンツはシーズン終盤までAクラス争いを続け、70勝69敗4分・勝率.504の3位という成績でシーズンを終えました(NPB公式記録より)。
| 順位 | チーム | 試合 | 勝 | 負 | 分 | 勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 阪神タイガース | 143 | 85 | 54 | 4 | .612 |
| 2位 | 横浜DeNAベイスターズ | 143 | 71 | 66 | 6 | .518 |
| 3位 | 読売ジャイアンツ | 143 | 70 | 69 | 4 | .504 |
| 4位 | 中日ドラゴンズ | 143 | 63 | 78 | 2 | .447 |
| 5位 | 広島東洋カープ | 143 | 59 | 79 | 5 | .428 |
| 6位 | 東京ヤクルトスワローズ | 143 | 57 | 79 | 7 | .419 |
阿部監督体制2年目のチームは、若手とベテランをミックスした野手編成で、外野は年間を通じて競争が激しいポジションでした。その中でオコエは、中堅・左翼を中心にスタメンと途中出場を併用される形で起用され、「守備と走塁で流れを変える選手」として役割を担ってきました。
球団と本人の言葉に見る、別れ方の“温度感”
球団のリリースでは、自由契約の決定について「オコエ選手がさらに活躍できるよう、可能な限りサポートしていく」と強調。契約打ち切りではなく、本人のチャレンジを後押しする形での決断であることが、はっきりと打ち出されています。
一方、オコエは球団を通じて「シーズン終了後から球団と話し合い、最終的に海外野球を含めた他チームへの挑戦ということを認めていただきました」「3シーズン、ご声援いただいたファンの方や監督、コーチ、チームメート、球団スタッフの皆様には感謝の気持ちしかありません」とコメント。ジャイアンツへの感謝を繰り返し述べた上で、「成長した姿を見せられるようチャレンジしていきたい」と前を向いています。
これからのオコエはどこへ向かうのか
NPBで「現役ドラフト組の成功例」として再び脚光を浴びたオコエが、次のステップとして選んだのは、あえて球団との契約という安全地帯を離れての挑戦です。海外リーグか、他のNPB球団か、あるいは独立リーグ経由なのか――現時点では行き先は白紙ですが、「環境を変えながら生き残りを図る」という現代プロ野球選手のキャリア設計を象徴する選択とも言えます。
甲子園スターとして注目を浴び、楽天で苦しみ、現役ドラフトで巨人に救われ、東京ドームでサヨナラ弾を打ち、そして今度は自らの意思で外の世界に踏み出す――。アップダウンの激しい野球人生の中で、オコエがどのような答えを示すのか。次にどのユニホームを着て、どんなプレーでファンを驚かせてくれるのかを、じっくり待ちたいところです。
