なぜメッシはアメリカ(MLS)を選んだのか — 2年連続MVPとマイアミ初タイトルが語る「挑戦と再起」の物語

FOOTBALL

2025年12月11日

リオネル・メッシは、38 歳にして欧州トップクラブを離れ、米国 MLS のインテル・マイアミへ。そして、2025 シーズン、2年連続リーグMVPを獲得し、クラブ史上初のMLSカップ制覇を成し遂げた。なぜ彼はアメリカを選び、“新天地”で再び頂点に立ったのか――その理由と背景をまとめてみた。

なぜメッシはアメリカ(MLS)へ? — “競技・家族・ビジネス” の三位一体

① ヨーロッパ復帰は現実的ではなかった
メッシ自身は当初、古巣 FC Barcelona への復帰を望んでいたと語っています。しかしクラブは財政難で、大きな年俸や登録枠の確保ができず、実現はほぼ不可能にとなった。

②サウジからの超巨額オファーもあったが… “お金より家族と幸福” を選択
欧州復帰の道が閉ざされる中、サウジのクラブから年俸数百億円レベルのオファーがあったという報道もあった。しかし本人は「家族がヨーロッパの生活圏を離れたくない」「競技面で満足感を得たい」という思いが強く、断ったと言われています。

③“普通の日常を取り戻す” 選択
メッシはインタビューで「子どもたちの学校や生活、家族の幸せを最優先にしたかった」と語った。マイアミはスペイン語圏コミュニティも大きく、治安面・生活面も馴染みやすい環境。スター選手であると同時に “父親としての選択” が MLS 移籍を後押しした。

④“新しい挑戦” — MLS/マイアミを変えるために
競技的な全盛期を過ぎても、メッシは「新しい文化・新しいリーグでサッカーを楽しみたい」という姿勢を失わなかった。そして彼の加入は、単なるスター獲得にとどまらず、MLS 全体の構造を変えるものとなった。

⑤史上最強クラスの契約モデル— 選手契約を超えた “新たな関係”
メッシは年俸だけではなく、
・Apple TV(MLS Season Pass)の収益分配
・Adidasとの利益シェア
・将来的なインテル・マイアミの株式取得オプション
など、企業とリーグを巻き込んだ “キャリア第2章の共同プロジェクト” を構築した。
欧州では不可能な契約形態であり、MLS 移籍の決定打になったとされる。つまり「選手としてプレーするだけ」ではなく、クラブ価値の向上・MLSのブランド強化・将来への投資という「クラブ/リーグと共に歩む」という、給料目的ではない“長期的なコミットメント”を示していた。

メッシ加入で何が起きた? — 数値で見る経済的インパクト

メッシが MLS に加入した 2023〜2025 年で、リーグとインテル・マイアミは前例のない成長を遂げた。

✔︎ 観客動員:リーグ史上最多の 1,145 万人(前年比 +5%)
2024シーズンの MLS 公式入場者数は約 11.45 百万人と史上最多を記録し、前年度比 +5%(2022年比 +14%)の増加。平均観客数も 23,234 人/試合 だった。
70,000人以上の観衆を記録した試合や、複数のチームが入場記録を更新するなど、メッシ効果がリーグ全体の集客力底上げに寄与した。

インテル・マイアミの平均観客数も、メッシ加入前の約12,600人から、2万人超に増加(MLSやLeagues Cup含むすべて試合)という報告あり。

✔︎ 放映権・配信:Apple TV+ の MLS 加入者数が「倍増」
メッシ加入前後で、Apple TV+「MLS Season Pass」の加入者が100万人→200万人超に増加(推計)したと報道されている。特にメッシデビュー戦当日の新規加入者は約10万規模という推計もあり、即効性を示した。

✔︎ クラブ価値:インテル・マイアミは「12億ドル」へ倍増
フォーブスの 2025 年版 MLS クラブ価値ランキングでは、インテル・マイアミの評価額は約 12 億ドルに到達。メッシ加入前(2022年)は約6億ドル規模で、ほぼ2倍の数字であった。MLSで2位の価値を持つクラブへと成長した。

年商(総収益)も年50〜60百万ドル規模(メッシ加入前)とされていたが、2024年には200百万ドル近くまで増加したと報じられ、「メッシはクラブとリーグ全体の経済構造を変えた」と評価されている。

成果:2年連続MVPとクラブ初タイトルという“結果”が意味するもの

2025 シーズン、メッシはリーグ最優秀選手 (MVP) を2年連続で受賞。これはMLS 歴史上初の快挙。さらに、2025年12月6日のMLSカップ決勝で、インテル・マイアミは勝利し、クラブ史上初のMLSカップ制覇を達成。

「世界最高峰の舞台」で勝ち続けてきた男は、競技・人生・ビジネスのすべてを組み合わせた移籍で、MLS全体の価値を押し上げ、新天地で再び頂点を取った。

2025年10月、インテル・マイアミは、メッシとの契約延長を正式に発表。契約は 「2028年シーズン終了まで」。クラブ公式声明によれば、この延長はマイアミ新スタジアム Miami Freedom Park を見据えたもので、メッシ自身も「このプロジェクトの継続として嬉しい」「この街、このクラブ、このゲームに対するコミットメントだ」と喜びを示している。

メッシにとってMLSは“レジェンドの余生”ではなく、“新たな歴史”を作る舞台だった。

【2025シーズン成績まとめ】

レギュラーシーズン:28試合・29ゴール・19アシストで得点王を獲得。
プレーオフ:圧倒的な存在感でチームを牽引。
MLSカップ決勝:2アシストで勝利に貢献し、悲願の初制覇を達成。

【動画】MLSカップ(決勝)試合ハイライト