WINTER NOTE編集部です。ノルディックスキー・ジャンプFISワールドカップ2025/26シーズンは、フィンランド・ルカでのラージヒル個人第5戦(11月29日)が実施され、日本の二階堂蓮(日本ビール)が自身初となるW杯個人表彰台となる2位に入りました。強風で2本目がキャンセルされる難コンディションの中、141mのビッグジャンプでつかんだ歴史的な一日を振り返ります。
大会概要:ルカのラージヒルで行われた第5戦
今大会の概要は以下の通りです。
- 大会名:FISスキージャンプ・ワールドカップ2025/26 男子個人第5戦
- 日程:2025年11月29日(土)
- 開催地:フィンランド・ルカ(Ruka Nordic)
- 種目:男子ラージヒル個人 HS142(K点120m)
- 方式:2本制の予定が、強風と降雪・降雨の影響で1本目のみで順位確定
ルカは毎年「Ruka Nordic」としてクロスカントリーやノルディック複合も含めたシリーズ戦が行われる伝統会場。ヒルサイズ142mのビッグヒルは、強い横風や向かい風が吹きやすい“タフな台”としても知られています。
レースハイライト:強風ワンラウンド決着でつかんだ初表彰台
この日のルカは朝から風が不安定で、公式練習や予選の段階から難しいコンディション。決勝1本目はなんとか成立したものの、2本目に入ると風と雪・雨の影響で助走スピードが急激に低下し、公平性を保てないと判断されて途中打ち切り。結果として、1本目の成績がそのまま最終結果となりました。
そんな中、二階堂蓮は1本目で141.0mの大ジャンプ。ヒルサイズまであと1mに迫るビッグジャンプで、136.4ポイントを叩き出して暫定2位に浮上します。トップに立ったのは、142.0m(141.0ポイント)を飛んだ総合リーダーのアンツェ・ラニセク(スロベニア)。わずか4.6ポイント差での2位でした。
3位には世界チャンピオンのドメン・プレヴツ(スロベニア)が入り、4位にはブルガリアのヴラディミール・ゾグラフスキ、5位には日本のエース・小林陵侑(チームROY)が同点5位で続くなど、表彰台争いは強豪がひしめくハイレベルな戦いとなりました。
日本勢は、二階堂の2位に続いて小林陵侑が5位タイ、佐藤幸椰が17位、小林朔太郎が21位、内藤智文が44位、中村直幹が48位と、それぞれが難しい条件の中でポイントを積み上げています。
結果一覧:男子ラージヒル個人第5戦(ルカ)上位10名&日本勢
| 順位 | 選手 | 国 | 距離(1本目) | 得点 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | アンツェ・ラニセク | スロベニア | 142.0m | 141.0pt | 今季2勝目&総合首位キープ |
| 2 | 二階堂 蓮 | 日本 | 141.0m | 136.4pt | W杯個人初表彰台 |
| 3 | ドメン・プレヴツ | スロベニア | 132.5m | 128.0pt | 世界選手権王者が3位 |
| 4 | ヴラディミール・ゾグラフスキ | ブルガリア | 131.0m | 125.4pt | 自己最高順位を更新 |
| 5 | 小林 陵侑 | 日本 | 130.5m | 122.7pt | フランスのフーベールと同点5位 |
| 5 | ヴァランタン・フーベール | フランス | 132.0m | 122.7pt | 自身最高のW杯結果 |
| 7 | アンドレアス・ヴェリンガー | ドイツ | 127.5m | 120.4pt | シーズン序盤の不調から復調 |
| 8 | ニコ・キュトサホ | フィンランド | 128.5m | 119.6pt | 地元フィンランド勢トップ |
| 9 | ピウス・パシュケ | ドイツ | 126.0m | 119.0pt | ベテランが安定のトップ10 |
| 10 | グレゴール・デシュバンデン | スイス | 133.5m | 118.5pt | 距離を伸ばしてトップ10入り |
| 17 | 佐藤 幸椰 | 日本 | 126.0m | 112.6pt | 日本勢3番手 |
| 21 | 小林 朔太郎 | 日本 | 123.0m | 111.5pt | ルカでの貴重な経験値 |
| 44 | 内藤 智文 | 日本 | 101.0m | 68.9pt | 風に苦しむも果敢にトライ |
| 48 | 中村 直幹 | 日本 | 78.0m | 16.4pt | 厳しい条件に阻まれた一日 |
二階堂蓮とは?北海道から世界へ、反骨心でつかんだ大舞台
二階堂蓮は2001年5月24日生まれの24歳、北海道江別市出身。強豪・下川商業高校で早くから頭角を現し、高校時代にすでにW杯出場を経験した有望株でした。高校卒業後は東海大北海道に進学しましたが、より競技に集中するため1年で退学し、アルバイトをしながら競技を続けるという決断を下します。
その後、日本ビールスキー部の一員となって体制が整うと、国内大会やサマージャンプで着実に勝利を重ね、W杯でもトップ10フィニッシュを増やしてきました。昨季はあと一歩で表彰台を逃す試合もあり、「いつか必ず個人表彰台を」という思いを胸に戦ってきたシーズン。その悲願が、このルカの地でついに実を結んだ形です。
父・学さんも元ジャンプ選手という“ジャンプ一家”で育った二階堂ですが、そのキャリアは順風満帆ではなく、「反骨心」と努力で道を切り開いてきたタイプ。だからこそ、この初表彰台には「やっとここまで来た」という重みがあり、今後のさらなるジャンプアップを期待せずにはいられません。
W杯総合ランキング:第5戦終了時点の位置づけ
ルカ第5戦終了時点の男子W杯総合ランキング(暫定)は以下の通りです。二階堂は、今季ここまでの安定した成績もあり、堂々のトップ10入りを果たしています。
| 順位 | 選手 | 国 | ポイント | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | アンツェ・ラニセク | スロベニア | 356pt | ルカ勝利でリード拡大 |
| 2 | ドメン・プレヴツ | スロベニア | 270pt | 安定したトップ3フィニッシュ |
| 3 | 小林 陵侑 | 日本 | 266pt | 開幕戦勝利&常に優勝争い |
| 4 | ダニエル・チョーフェニック | オーストリア | 248pt | 開幕リレハンメル戦で優勝 |
| 5 | シュテファン・クラフト | オーストリア | 234pt | ファールンで勝利もルカは欠場 |
| 6 | ヤン・ヘール | オーストリア | 202pt | 今季も表彰台常連 |
| 7 | ステファン・エンバッハー | オーストリア | 189pt | 若手ながら安定感を発揮 |
| 8 | フィリップ・ライムント | ドイツ | 174pt | ドイツ勢の新エース候補 |
| 9 | 二階堂 蓮 | 日本 | 173pt | 初表彰台でトップ10圏内に浮上 |
| 10 | フェリックス・ホフマン | ドイツ | 164pt | 表彰台争い常連の一人 |
日本勢では、小林陵侑が3位、二階堂蓮が9位と2人がトップ10に入り、シーズン序盤から“日本ダブルエース体制”が現実味を帯びてきました。 Nations Cupでも日本は上位グループに位置しており、団体戦やミラノ・コルティナ2026五輪に向けて、チーム全体の底上げが進んでいる印象です。
公式ハイライト:二階堂の初表彰台を映像でチェック
FIS公式動画やSNSでも、二階堂の初表彰台は大きく取り上げられています。
次戦以降のスケジュール:舞台はポーランド・ヴィスワへ
ルカ2戦目(11月30日)は、最大風速18m/sに達する強風により競技そのものが中止となりました。そのため男子は次戦、ポーランド・ヴィスワでのラージヒル2連戦(12月6〜7日予定)へと戦いの場を移します。
ルカで自信と手応えをつかんだ二階堂が、次のヴィスワ、さらにクリンゲンタール、エンゲルベルク、そして年末年始のジャンプ週間と、どこまで上位争いを続けられるか。日本勢にとっても、シーズンを占う重要なターニングポイントとなりそうです。
まとめ:二階堂蓮は今季“本物のトップジャンパー”へ
ルカでのW杯初表彰台は、二階堂蓮にとってゴールではなく、むしろスタートラインと言える一歩です。
・タフなコンディションで結果を残せたこと
・世界チャンピオンや強豪勢と互角以上に戦えたこと
・総合ランキングでもトップ10に食い込んだこと
これらはすべて、「ミラノ・コルティナ2026五輪で、日本の個人メダル争いの中心に二階堂がいる未来」を現実味のあるものにしてくれました。WINTER NOTEでは今後も、二階堂蓮の一跳躍ごとにフォーカスしながら、シーズンの歩みを追いかけていきます。
最後に、今回の記事で使用したデータはFIS公式リザルトおよび公式記事、日本国内の報道をもとに作成し、数値・順位・日付などを確認済みです。気になるポイントがあれば、コメントやSNSでぜひ教えてください。
